こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 実際に会ってみたら、怖い見た目に反して優しかった。狼の皮をかぶった羊かもしれない、と思えるほどに。
 男らしさをコンプレックスに、編み物を隠していた。趣味を公にしたのは、きっかけこそ暴露だったが、それを利用して自分を演出する強さがある。

 親の権力をかさに着ず、自分自身で道を切り開いた万葉。
 彼が、人の力を借りるずるい自分を見たら、なんと思うだろう?

 ……彼はきっと、なにも言わない。
 だけどだからこそきっと、自分は自分を許せない。
 たとえ隣に立てなくとも、彼に誇れる自分でありたい。

「私……逃げたくないです」
 彩羅はようやくそれだけを言えた。

「どうして? 男を逃げ場にしてなにが悪いの? 女性の特権だよ。逃げてきた女性を守るのは、男の特権」
 ふふ、とまた余裕の笑みを浮かべる拓斗。

「違うと思います」
 彩羅はとっさに答えていた。
 慰められて嬉しいし、守ると言われて心が揺らがなかったわけじゃない。
 だけど、なにかが違う。

「違わないよ。俺なら万葉よりずっと君を幸せにできる」
「お気持ちだけいただきます。ありがとうございます」
 彩羅はぐいっとカフェオレを飲み干した。

「ごちそうさまでした」
 彩羅は立ち上がって、カップをシンクに持っていく。
 拓斗は苦々しく目を細めた。
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