こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「おはよう、今日からよろしく」
 顔を見た瞬間、店長の香笛拓斗(かぶえ たくと)に言われる。

 彼は万葉に劣らず背が高い。
 ふわっと流した茶色の髪に明るい茶色の瞳。たくさんの蝶をひきつける甘い蜜のような笑顔。余裕のある雰囲気に包容力も感じる。

「おはようございます。よろしくお願いします」
「拓ちゃん、誰~?」

 かわいらしい声にそちらを見て、愕然とした。
 金茶の長い髪はゆるふわに巻かれ、メイクは垂れ目風にして涙袋っぷっくりの少女。いわゆる白ギャルだ。

「萌木さん。こちらはバイトの椛川真里凛(もみじがわ まりりん)さん。基本的に早番です」
「椛川マリリンでーす。よろ~」

 ピースを顔の横にかざしてマリリンが言う。その爪にはごてごてした編み物モチーフのネイル。おおぶりのストーンが照明を反射してきらりと光る。
 彩羅はぺこりと頭を下げた。

「よろしくお願いします。萌木彩羅です。基本は遅番です」
 早番は九時半出勤で六時半退社、遅番は十時半出勤で七時半退社だから、勤務時間はほぼかぶっている。

「聞かれる前に言っとくけど、あーし、高校中退なの。十八歳フリーター」
 マリリンはあっけらかんとしている。

「カフェコーナーは少数精鋭だから、よろしくね」
「はい」
 席は四人掛けのテーブルが七つとふたりがけがひとつ。頑張れば拓斗とマリリンのふたりでもまわせそうで、本当に人手が足りなかったのだろうかと疑問に思わなくもない。
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