こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 これまで、勝ち目のない恋なんてしなかった。落ちる気配のない女にはさっさと距離を置いて、手軽な女をつまみぐいをする。女が自分のもとを去ってもかまいやしない。それが今までの自分だった。
 ……だが、それは果たして恋なのか? 彩羅への気持ちが本当の恋ではないのか?
 彩羅とは離れたくない。
 だから、肝心なところで守りに入ってしまっていた。
 その間も万葉はまっすぐに彩羅だけを見ていたに違いない。
 だからこそ、彩羅は万葉にひかれているのだろう。
 拓斗がいまいち踏み込めなかったのは、万葉の友情との天秤が常に揺れていたせいもある。
 きっと万葉は、自分が彼女を手に入れても許してくれる。わかっている。だが、今までと同じでいられなくなる。ジレンマだ。
 そうする間に「店長」のポジションが固まってしまった。距離を縮めるなら慎重に動かねばならない。
 だというのに。
「やっちまった……」
 片手で顔を覆う。
 弱っている彼女を見て、黙っていられなかった。
 万葉が守れないなら、自分がもらう。
 彼女を傷つけた存在に怒りがわいて。
 守れなかった万葉に怒りがわいて。
 だから言ってしまった。
 逃げておいで、と。
 だけど彼女が欲しいのは逃げ場ではなかった。
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