こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 逃げてばかりた。
 もめるのが嫌で、逃げるが勝ちとばかりに逃げてきた。
 戦うより楽だからだ。

 積み上げた努力を奪われても逃げて、取り戻す努力もせずに殻に閉じこもって、そんな自分でいいの?

 彼は前に進んでいるのに。
 立ち止まってばかりで、それで彼と差があるなんて、そんなの当たり前だ。

 彼みたいに前に進みたい。
 彼に誇れる自分でありたい。
 そのためには。

 彩羅は決意した。
 戦って、自分を取り戻すんだ。
 まるでこんがらかった糸がすっとほどけたように、心がすっきりしている。

 じっとしていられず、彩羅は万葉に電話をかける。
 ツーコールで万葉が出た。

「こんばんは」
『こんばんは。電話は珍しいな。どうした?』

「動画を見たの。それで」
 勢いで電話をしたので、思考はまったくまとまっていない。

「ありがとう、見てくれて」
 彼はそれで言葉を切る。

 万葉が待ってくれている。
 早くなにか言わないと。
 そう思うのにうまく言葉にならない。
 沈黙がもどかしい。
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