こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「前回と同じ美術館だが、新しい企画展なんだ。ぜひ見てもらいたくて」
「楽しみです」
 あえて調べずにいたから、どんな企画展なのかわからない。
「百均にお試し版を置くアイディア、ありがとう。もうすぐ出荷が始まるよ」
「早いですね」
「現場が頑張ってくれたからな。インフルエンサーとのタイアップも決まった。うちの毛糸を使って、百均の毛糸で編んでみた、という動画がアップされる予定だ。ほかにも君のアイディアをもらったよ」
「私の?」
 彩羅が首をかしげると、彼は言う。
「俺が渡したブーケを染めた話」
「すみません。どうしてもシミがおちなくて。それならいっそ、ってコーヒー染めにしました」
「それだよ。コーヒー豆のごみ問題は知ってるか?」
「聞いたことあります」
 日本だけでもコーヒー豆のごみの量は年間約四十二万トン。抽出後のかすには水分が含まれるため、実際には二倍以上と言われている。焼却すると二酸化炭素ガスが出るし、埋め立てに使うと二酸化炭素の二十五倍の温室効果のあるメタンガス発生の恐れがある。
「フォレストでは堆肥にして利用しているらしいが、限界がある。わが社ではコーヒー豆から繊維を取り出し、利用することを決めた」
「豆から」
 彩羅は驚いた。確かに植物ではあるが、糸ができるとは思ってもみなかった。
「コーヒー染めも予定している。フォレスト、エルネスと協力して新製品を開発、利用する」
「エルネスと!?」
 情報流出でもめていたはずなのに。
「アッパークラスは環境問題への関心が強い人が多い。エルネスに話を持ちかけたら喜んで乗ってくれたよ。企業イメージを上げて顧客にアピールするんだ」
 簡単に言うが、交渉は大変だっただろう。万葉だからこそできたに違いない。
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