こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
3
「行ってきます」
万葉にもらった花束に声をかけ、彩羅は玄関を出た。
昨夜は帰りに百均に寄って花瓶を買い、ブーケを飾った。それだけで部屋が華やかになり、沈んだ気持ちが浮上した。
十時半からの出勤なのでお店はすでに開いている。
エプロンをつけて店に出ると、お客さんはまだいない。
「おはー」
元気な挨拶に、彩羅は「おはようございます」と返す。
「お客さん、いませんね」
「敬語やめよ。タメでよろ」
「……はい」
にかっと笑うマリリンに圧倒されつつ、彩羅は頷く。
「この時間はちょー暇だよ。でもスマホで遊ぶと拓ちゃんがダメって」
「アイドルタイムは掃除するようにとか言われなかった?」
「歌ったり踊ったりしながら掃除するの?」
怪訝に聞き返され、彩羅は苦笑した。
「アイドルタイムは手が空いてる時間のこと。芸能人のアイドルとは英語にすると綴りが違うの」
「やば! そんなん知らんし。英語ペラペラ界隈?」
「ペラペラではないかな」
以前カフェで働いていたときには外国のお客様も多かったので英語を頑張っていた。事務仕事では英語を使わなかったのでもう忘れてしまった。
「えー、サゲ」
「サゲってなに?」