こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「どんな話を?」
「俺が編み物をすることに否定的だったのは、母を思い出してつらかったからだと謝られたよ」

「お父様はずっとお母様を愛してらっしゃったのですね」
 彩羅の言葉に、万葉は頷く。

「だけど子供だった俺は察することができず、言葉通りに受け止めてしまった。父は編み物対決の動画を見て発言を思い出し、わざわざ謝ってくれた。もっと早くに父と話せばよかったよ」
 彼は苦笑をもらす。

 ずっとコンプレックスになっていたのだ、複雑な思いがあっただろう。
 なのに笑い交じりに話す彼は、とても強いと思う。
 編み物を、好きだからで続けてきた根気の強さ、子供のころの夢をかなえる実行力。
 なにもかもが自分にないものだ。

「すごいな、糸条さん」
「彩羅さんのほうがすごい。度重なる嫌がらせに耐え抜いて自分で道を切り拓いたんだ。俺なら速攻でぶち切れてケンカだよ」

「頑張るきっかけをくれたのは、糸条さんよ。編み物にはまるきっかけをくれたのも……」
 彼がいなければ、ずっと泣き寝入りのままだったかもしれない。立ち向かって自分を取り戻す。その勇気をくれたのは、万葉だ。

「お互いにお互いをきっかけにしているんだな」
「ですね」
 彩羅が笑うと、万葉は目尻を下げて彩羅とつないだ手にぎゅっと力を籠める。だから彩羅もぎゅっと握り返した。

 展示を見終えたふたりは庭園へと足を向ける。
 庭を見た彩羅は「あ!」と声を上げた。
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