こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 彩羅は穏やかなBGMを聞きながらマリリンと一緒に食洗器で洗い終わった食器を片付ける。
「彩羅っち、どうしてこの店に来たの?」
「紹介してもらったの。椛川さんは?」
 彩羅っちって、と思いながら彼女は答える。

「学校辞めて遊んでたら働けってママちゃんに言われちって。スマホで求人見て仕方なく面接来たら拓ちゃんイケだからここに決めた」
 よく彼女を採用したな、と拓斗を見ると、彼はすまし顔で仕込みを続けている。

「ちゃんと働きに出て偉いね」
「でしょー!」
 マリリンは嬉しそうに笑顔になる。かわいいな、と彩羅はほほえましくなる。これなら言っても大丈夫かもしれない。

「ネイルなんだけどね」
「かわいいっしょ」

「うん、かわいい。でも飲食店でそのネイルはお客さんがどう思うかな」
「かわいいって思うっしょ!」
 自信まんまんにマリリンは答える。拓斗がぷっと噴き出すのが聞こえ、彩羅も苦笑した。

「彩羅っちもやろうよ、ネイル」
「私はやめておくね」
 やんわりと注意するって難しい、と彩羅は言葉を飲み込む。

「椛川さん。前も言ったけど仕事中は『さん』づけで呼んでね」
 笑いをこらえた様子で拓斗が言う。

「ケチい」
「世間はケチなんだよ」
 あっさりとそう返す拓斗に彩羅は感心する。自分なら常識だからとかマナーだからとか答えてしまいそうだ。
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