こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「どうされました?」
「母を思い出しまして」
懐かしそうに目が遠くを見る。
「亡くなって長いんですが……母がほめてくれたから今も編み物が好きで」
「素敵なお母様ですね」
「はい。暖炉の前で一緒に編みながら、母はすいすい編んでいくのに自分はうまくできなくて、負けるか! って頑張ってましたよ」
彩羅の脳裏に浮かぶのは、暖炉の前で絨毯に座る母と幼い男の子。座った足もとに丸い毛糸玉が転がり、長い編み針を両手に持って奮闘する姿はかわいかったに違いない。彼の母は微笑ましく彼を見守っていただろう。
そんな温かな母を亡くした彼を思うと胸がぎゅっと痛む。
「父からは『編み物なんて女々しい』と怒られて。中学では同級生にばれたときにからかわれて。それからは秘密にしてましたよ」
直後、慶太を思い出してしまった。彼は編み物をする彩羅を女らしいとほめてくれたが、今はそれが妙にいらつく。
「男らしいとか女らしいとか関係ないですよ。好きなら好きで、堂々としていいと思います」
「理性ではそう思うんですが、なかなか……」
うーん、と彼は首を傾ける。
見た目はすごく男らしいのに。らしさを気にして言えないなんて、意外な弱点だ。
「こういうのも男らしくないでしょうね」
うーん、とさらにうなる彼にくすっと笑う。
「でも、羊さんは羊さんですから」
「華糸さんにそう言われると元気が出てきます」
アカウント名で言われ、彩羅は少し恥ずかしくなった。最初はまったく平気だったのに。
「母を思い出しまして」
懐かしそうに目が遠くを見る。
「亡くなって長いんですが……母がほめてくれたから今も編み物が好きで」
「素敵なお母様ですね」
「はい。暖炉の前で一緒に編みながら、母はすいすい編んでいくのに自分はうまくできなくて、負けるか! って頑張ってましたよ」
彩羅の脳裏に浮かぶのは、暖炉の前で絨毯に座る母と幼い男の子。座った足もとに丸い毛糸玉が転がり、長い編み針を両手に持って奮闘する姿はかわいかったに違いない。彼の母は微笑ましく彼を見守っていただろう。
そんな温かな母を亡くした彼を思うと胸がぎゅっと痛む。
「父からは『編み物なんて女々しい』と怒られて。中学では同級生にばれたときにからかわれて。それからは秘密にしてましたよ」
直後、慶太を思い出してしまった。彼は編み物をする彩羅を女らしいとほめてくれたが、今はそれが妙にいらつく。
「男らしいとか女らしいとか関係ないですよ。好きなら好きで、堂々としていいと思います」
「理性ではそう思うんですが、なかなか……」
うーん、と彼は首を傾ける。
見た目はすごく男らしいのに。らしさを気にして言えないなんて、意外な弱点だ。
「こういうのも男らしくないでしょうね」
うーん、とさらにうなる彼にくすっと笑う。
「でも、羊さんは羊さんですから」
「華糸さんにそう言われると元気が出てきます」
アカウント名で言われ、彩羅は少し恥ずかしくなった。最初はまったく平気だったのに。