こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~



 水曜日の定休日をはさんで木曜日。
 出勤直後、マリリンは彩羅に言う。
「前はフロアがあーしだけで大変だったんよ。最初は人妻がいたんだけど、店長にマジ恋して振られてソクサリだったんよね」
 ソクサリは「即、去った」の略だ。

「マジで神」
 マリリンが両手を組んで彩羅を拝む。
「大げさ」
 彩羅はくすっと笑う。

 彼女は感情を率直に伝えてくれるからかわいい。
 そうして万葉を思い出す。
 強面で冷静な彼の、思わず感情があふれる姿はかわいい。特に恥ずかしがる姿がかわいすぎる。

 自動ドアが開き、客が入ってきた。
「いらっしゃいませー」
 彩羅はすかさず声をかけ、席に案内する。

 初来店の客には場所代が必要なこと、勉強や読書、仕事に使ってもOKだが、縫い物は許可していないことを説明する。針がソファに刺さって気づかれないままだと危険だ。

「拓ちゃんってかっこいいよね。料理はおいしいし、愛想もいいし」
「そうだね」
 夕方、手すきの時間にマリリンに言われ、彩羅は頷く。
「彩羅っち独身なら狙えば。拓ちゃんも独身だし、今は恋人いないって」
「えっ」
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