こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「加えて、手芸ショップの店員の持ち物をカフェ店員が隠すのか? どうやって?」
「えっと……ペンを借りぱくしたり」
 万葉はますます白けた。

「君のところへ来て、ペン一本を? それは大変だな」
 なんとお粗末な嘘か、と万葉はあきれる。

「そうなんですう」
 信じてもらえたと思い込んだ月菜は両手を胸の前で組んでうるうると万葉を見上げる。

「前は糸条の派遣で一緒に働いてたんですけど、彼氏をとられたと思い込んでて、編みものを取り上げられて、課長がいじめを注意したら逆切れして辞めて、私をすごく恨んでるんです」
「お前か」
 顔をしかめ、思わず万葉はこぼす。

 まだ青空羊と華糸だったとき、彩羅から真逆の話を聞いた。つまりはこの女が当事者で、立場を入れ替えて話しているのだ。
「それが事実ならすぐに動かなくてはな」
 目をきらきらさせる月菜に、万葉は軽蔑の目を向ける。

「で、証拠は?」
 続いた言葉に、月菜はきょとんとする。
「そこまで言うなら証拠があるのだろう?」
 射すくめるまなざしに、月菜は言葉をなくす。

「まさか証拠もなく言ってるのか?」
「だって……みんなが見てないところでやってくるし」
 月菜は言い淀むが、万葉の追及は止まらない。

「コーヒーをかけられた服は?」
「洗っちゃったからもう……」
「コーヒーのシミはしつこいと聞くが、それを抜けるとは、君は相当な洗濯上手だな」
 コーヒーはすぐに洗えばたいてい落ちる。だからこれは一種のかまかけだ。どう反論してくるか。
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