こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「あ、でもシミが落ちなくて捨てちゃったんでした」
 万葉は鼻で笑った。自分を正しく見せようとして簡単に主張が揺らいでいる。

「証拠がないなら探してやろう。カフェの防犯カメラ映像が残っているはずだ。何月何日、何時頃だ?」
「え!?」
 月菜は目を丸くして万葉を見た。彼の目は冬の夜空のように冷たく月菜を見下ろしている。

「それは……やめてあげてください」
「いじめの被害を訴えながら、証拠を探すなと?」

「はっきりさせちゃうのは萌木さんがかわいそうで」
「証拠がないのは、いじめが虚偽だからだ。証拠を探されて困るのも同様」
 万葉の断言に、月菜はうるうると万葉を見上げる。

「私、本当にいじめられてて、つらくって」
「支離滅裂だな」
 万葉の顔には嫌悪が満ちている。

「今回は不問にしてやる。二度と嘘をつくな。彼女には接触せず、仕事だけしていろ」
 言葉を切り、万葉は一段と冷酷に月菜をにらむ。

「俺を舐めるな」

 びくっとした月菜はすぐに気を取り直す。
「……信じてもらえなくて悲しいです」
 月菜は顔を覆って泣きながら立ち去った。

 その背を苦い顔で見送り、万葉はつぶやく。
「彩羅さん、糸条で働いていたのか」
 同じ会社だとわかっていたら、もっとはやく彼女を守れたのに。
 いや、もしそうなると彼女が恋人と別れていなかったかもしれない。

 月菜は許しがたく、徹底追及してやりたい。が、転職したばかりの彩羅の負担になるかもしれず、自制した。
 次があったら必ず、生まれたことを後悔するほど追い詰めてやる。
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