こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 落ち着け。
 前は告白されて浮ついてOKしてしまい、ひどい目に遭った。今度は冷静にならないといけない。

 だけど、彼とは一言投稿サイトで話をしていたから、人となりは知っている。
 その後は動揺を引きずり、なんども時計を見てそわそわしてしまった。



 仕事を終えて店を出ると、大きな黒塗りの車が止まっていた。
 あれかな、と近づくと車から彼が降りてくる。
 その顔は険しく緊張がある。外灯の光がそそぐ下にいるせいか、顔には影が濃い。

「……すまない」
 会うなり、彼が言う。
 なにを、と思ってから抱き寄せられたことを思い出して顔が熱くなった。

「気にしないでください。大丈夫ですから」
「君は心が広いな。俺がだましたとは思わないのか」
「だます?」
 はてな、と彼を見ると、まなざしが暗い。

「会社員と言っていたが、実は糸条紡績の専務なんだ」
 苦々しく告げる彼に、彩羅は、なあんだ、と胸をなでおろす。

「知ってましたよ」
「だまされたと非難されても仕方がな……知ってた!?」

 驚く顔が面白くて、彩羅はくすくすと笑う。
「会社でぶつかったことがあります。だから毛糸を渡すために会ったとき、すごくびっくりしました」
 万葉は呆然としていて、彩羅はさらにくすくす笑う。拓斗が笑い上戸になった理由がわかる気がした。
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