こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「会社での俺は感じが悪かっただろ。怖がらせてはいなかったか?」
 不安そうな彼に、ちょっと意地悪な気持ちがわいてくる。

「怖かったですよ」
 彩羅が答えると、彼はショックを受けたように肩を落とした。

「悪かった。社員になめられないようにするためなんだ」
「ずっと演技してるんですね。すごく疲れそう」

「疲れる。だから君と話しているときが唯一の癒しの時間だった。君の前なら気を張らなくていいから」
 優しい目を向けられ、彩羅の胸がきゅんとなった。自分が彼の特別みたいだ。

「私も羊さんと話しているときはすっごく楽しくって、癒しです」
「そう言ってもらえてありがたい」

「告白って、このことだったんですね。私、てっきり」
 言いかけて、彩羅は慌てて口に手を当てる。
「てっきり?」
 彩羅はとっさに頭を下げた。

「私も、同じ会社で働いてたことを黙っててすみません。会社員と自己紹介されたので、言いませんでした。私が会ってるのは青空羊さんとであって、専務じゃないんだって」
「君は気遣いができる人だな。つくづくいい人をスカウトしたと思うよ」
 彩羅は照れてもじもじした。

「このあと食事にでも……」
 スマホが鳴り、彼の言葉が途切れた。
 嫌そうにスマホを出した彼は、しぶしぶのように通話を押す。それが子供っぽくて、彩羅の頬がゆるむ。

「糸条だ。……その案件は先方のOKが出ただろ。どうして今さら」
 厳しい声音に、彩羅は黙って背を向けて待つ。
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