こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「……わかった、戻る」
 やがて彼は通話を切った。

「呼び出しておいてすまない、戻ることになった」
「大丈夫ですか?」

「契約でトラブルがあったんだ。なんとかするさ」
 不敵な笑みに、彩羅は思わずほれぼれと見惚れた。
 プライベートな彼はすごく親しみやすいのに、仕事ではきりっとして高低差が激しすぎる。

「また連絡する。今度は食事に行こう」
「はい」
 返事をして、車を出す彼を見送る。
 頑張ってね、と心の中でエールを送ってからふと気がつく。

「私、食事に誘われた!? OKしちゃった!?」
 あまりに自然な流れだったので、普通に返事をしてしまっていた。
 あわあわと慌てるが、今さら撤回などできない。

 そもそも撤回したいのだろうか。
 ……そんなわけない。
 どきどきして、スマホが気になって仕方がない。

 帰って食事をするときもシャワーを浴びるときも着信を気にしてしまう。寝る時もそばにおいていたが、結局その日、連絡が来ることはなかった。



 翌日の出勤直後、バックルームで月菜と出くわして彩羅はびくっとした。
 月菜は、ふん! と顔をそらすだけで特に何も言わずに店へと出ていく。
 注意喚起のおかげだろうか。月菜も正社員になったばかりで問題を起こしたくないのだろう。

 ほっとしてエプロンをつけてカフェに行くと、客席では女性が編み物にいそしんでいた。
 それを眺めていたマリリンが、彩羅を見つけて寄ってくる。
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