こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「なにか誤解してる?」
「白々しい! お前のいじめは上司にも報告するからな!」
「やめて、そんなことしたら彩羅が会社に居づらくなっちゃう!」
「月菜は優しいな」
慶太は優しく彼女に目をやったのち、彩羅をにらみつける。
彩羅は混乱したまま、あとずさり、そのまま非常階段の踊り場から総務課へと戻った。
どういうこと?
さきほどの光景とセリフを思い出し、考える。
——つまり、二股されてたの? リクエストのマフラーは、自分が編んだって嘘をついてプレゼントするため?
『簡単だったよ』
得意げな月菜の声がよみがえる。苦労した編んだものを、簡単だったよ、なんて。
ひとりで社員食堂に行ったもののろくに食べられず、午後は仕事が手につかなかった。
夜、ひとり暮らしの自宅に戻った彩羅は、リビングに置かれたいくつかの紙袋を見てため息をついた。
この袋にはたくさんの毛糸が入っている。手芸用品店に行くとついつい買ってしまうからだ。必死にセーブしていても、やはりストックが発生してしまう。
編み物を始めたのは、転職がきっかけだった。
以前はカフェチェーンで働いていた。カフェが好きで就職できて喜んでいたが倒産してしまい、慌てて登録した派遣会社に紹介されたのが今の勤め先『糸条紡績』だ。そこで正社員を目指して事務として働いている。正社員になりたいのは、やはり安定したいからだ。
同じ派遣会社から同時期に入った月菜は同い年で、すぐに打ち解けた。
糸条紡績は糸や布を扱う会社で、雑務をこなすうちにも糸の話題が入ってくる。自然と編み物に興味がわいて挑戦した。
「白々しい! お前のいじめは上司にも報告するからな!」
「やめて、そんなことしたら彩羅が会社に居づらくなっちゃう!」
「月菜は優しいな」
慶太は優しく彼女に目をやったのち、彩羅をにらみつける。
彩羅は混乱したまま、あとずさり、そのまま非常階段の踊り場から総務課へと戻った。
どういうこと?
さきほどの光景とセリフを思い出し、考える。
——つまり、二股されてたの? リクエストのマフラーは、自分が編んだって嘘をついてプレゼントするため?
『簡単だったよ』
得意げな月菜の声がよみがえる。苦労した編んだものを、簡単だったよ、なんて。
ひとりで社員食堂に行ったもののろくに食べられず、午後は仕事が手につかなかった。
夜、ひとり暮らしの自宅に戻った彩羅は、リビングに置かれたいくつかの紙袋を見てため息をついた。
この袋にはたくさんの毛糸が入っている。手芸用品店に行くとついつい買ってしまうからだ。必死にセーブしていても、やはりストックが発生してしまう。
編み物を始めたのは、転職がきっかけだった。
以前はカフェチェーンで働いていた。カフェが好きで就職できて喜んでいたが倒産してしまい、慌てて登録した派遣会社に紹介されたのが今の勤め先『糸条紡績』だ。そこで正社員を目指して事務として働いている。正社員になりたいのは、やはり安定したいからだ。
同じ派遣会社から同時期に入った月菜は同い年で、すぐに打ち解けた。
糸条紡績は糸や布を扱う会社で、雑務をこなすうちにも糸の話題が入ってくる。自然と編み物に興味がわいて挑戦した。