こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
翌日、彩羅は手元に残っていた編み針と毛糸を持って出勤した。
拓斗に頼んで休憩時間をマリリンと合わせてもらい、奥の席に座る。バックルームでの休憩は月菜と鉢合わせのがあり、すいているときには店での休憩を許可されているのだ。休憩時間も店長同士が相談してずらしてくれる。
「どうぞ」
「あざまる! マジもらっていいの?」
マリリンはいそいそと紙袋の中を見る。
「もう編まないから」
「でもこれ、どうすんの?」
棒針を箸みたいに持ってぱかぱかさせるマリリンに、彩羅は苦笑する。
「かぎ針編みと棒針があって、どっちで編みたい?」
「イミフ」
棒針とかぎ針を前に、マリリンは顔をしかめる。
「じゃあその本のどれが編みたい?」
差し出したのは初心者向けのニット読本で、『編み物キングおすすめ簡単すごいニット』とタイトルがふられている。表紙にはニットやマフラー、毛糸の写真があり、編み物キングこと高瀬幸次の写真も載っている。
マリリンは柄編みのマフラーのページを開いた。
「こういうのが良き」
「じゃあ棒針編みだね」
「毛糸はこれがいい」
紙袋からマリリンが取り出して言うが。
「細すぎてこのマフラーは無理かな」
「そんなんあるの? 複雑すぎ!」
「だよね。私もそう思った。だから最初はすっごく簡単なマフラーにした」
「どんな?」
「これ」