こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 ふと、誰かと編む楽しみを語り合いたくなった。
 ネットならば正体を隠して交流できると、一言投稿サイトにアカウントを作り、編み物についてつぶやいた。

 編み物を趣味にしているのは女性が多く、女性の知り合いが増えた。
 彼女らとの会話は楽しかったが、どこかで彼女らを騙している罪悪感があった。性別を公表していないことで、自分を女性だと思う人がいるようだったから。

 もうネットもやめようか。
 そう思った矢先、華糸――彩羅からDMが来た。

『あなたのおかげで編めました。丁寧な解説でキングの本よりわかりやすくて、初めて完成して感動しました! こんなに楽しいなんて、すごくはまりそうです!』

 思いがけない言葉だった。
 力になれたのが嬉しいし、編み物界のキングよりわかりやすいと言ってもらえたのも嬉しい。すぐに彩羅のアカウントをフォローし、返事をした。

 彼女の編み物への反応が初々しい。自分も初期は手間取ったり、編み図に怒ったりしながら編んでいたな、と、懐かしくも温かな気持ちがわいてくる。

 彼女の投稿はきらきらして見えた。純粋な姿が微笑ましくて、ついつい毎回コメントをしてしまったが、楽しそうな返事に心が弾む。
 作品をアップすると彼女が素直な感想をくれて、それもまた嬉しい。

 思えば自分はいつでも人から「糸条の御曹司」という目で見られてきた。求められるのは男らしさ、リーダーシップ、人として立派であれという期待。
 彼女にはそれがない。当たり前だ、知らないのだから。
 ただ純粋にふたりとも編み物が好きでつながっている。
 この貴重な関係をずっと続けたい。

 ほかにも編み物でつながっている人たちはいるのに。
 だというのに、彩羅のコメントにだけは強く反応する自分がいた。
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