こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 用もなくスマホを見ることが多くなり、彼女からコメントがつくとそれだけで心が浮き立つ。彼女の投稿を探し、見つけると嬉しくてたまらない。

 自覚せざるを得なかった。
 彼女に恋したことを。
 会ったこともないのに。
 そんなことがあるなんて、初めて知った。

 だが、どう距離を詰めていいのか、はかりかねた。
 男らしく玉砕覚悟でいくべきか、少しずつ近づくべきか。
 迷ううち、恋人ができたと聞かされ、大きな衝撃を受けた。

 潔く身を引こうと決めたものの、一か月ほどで振られたと聞いたときには、こんな素敵な彼女を振るなんてと怒りが沸いた。
 彼女が毛糸を手放すと知ったときには心が痛んだが、チャンスだ、とも思った。
 この縁の糸を逃してはならない。

 あれこれ口実をつけて会って受け渡しをする約束をとりつけたときには、ガッツポーズとともに雄たけびを上げ、秘書をびくっとさせた。
 大きな取引が成功したのだと思われたので、そういうことにしておいた。

 彩羅に会ってみたらネットで接した通り率直で真面目な人柄で、ますます惹かれた。
 失職したと聞いたときには思わずカフェへ推薦していた。

 女たらしの拓斗がいる店だというのに。彼女が嫌になったと言っている編み物をする店だというのに。
 少しでも彼女との距離を近づけたくて。

 会社では彼女という人材を逃したが、プライベートでは絶対に逃すつもりはない。
 拓斗に「彼女に変なことをするな」と釘を刺すと、そんなことを言うのは初めてだな、と驚かれた。
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