こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「親父がうるさくてな」
 万葉が渋面を作ると、にやっと拓斗が笑う。

「だったらやっぱ萌木さんに偽装彼女になってもらったら」
「そんなこと頼めるか」
 即座の拒否に、彩羅の胸になにかがグサッと刺さったが、必死に平静を装う。
 食洗器が終了を告げたので、さっとカウンターの中に行く。

「あーしがやってあげる。時給百万ね!」
「払えるかっ」
「御曹司なのに?」

「椛川さんが偽装彼女になってここを辞めちゃったら俺が困るなあ。珍しく俺に惚れない女性なのに」
「店長困らせるのは困る」
 むむむ、と悩むような声音のマリリンに、彩羅はうらやましくなる。

 自分も軽く返せたらいいのに。
 だけど。

『正々堂々と彼氏になってあの男を滅ぼす』
 彼の言葉が脳内によみがえり、カーっとなって顔を覆う。

 あれ以来、なんどもよみがえっては打ち消してきた。
 告白だって勘違いだったんだから。

 深い意味はない、深い意味はない。
 そう念じるほど、彼の言葉が脳に刻まれてしまう。
 食洗器をがばっと開けた彩羅は、布巾で無心に食器を拭いた。
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