こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
『なんてね』
 冗談なのか、とほっとしたが、うずうずしてしまう。

 青空羊さんだから青が似合いそうと思ったけど、彼ならすっきりした青よりもネイビーのような落ち着いた色合いがいいだろう。グレイッシュなら青でも水色でもいけそうだ。

 いっそ羊をイメージして白い毛糸はどうだろう。ふわふわしたマフラーをさせたら強面な見た目とのギャップでかわいいかもしれない。
 考えるだけで自然と頬がゆるむ。

「お店で一緒に編めたら楽しいだろうな」
 そのときには自分が淹れたコーヒーを出して、「うまい」と言わせたい。
 ぴこん、とまたスマホが鳴った。

『俺も君にお礼がしたいな』
 お礼、と彩羅は首をかしげる。お店に来てくれるだけでもうれしいのに。

 だけど彼は断っても引かないだろう。
 重くならずにおねだりできるお礼ってなんだろう。
 そう思ったのち、ふと彼が謎の鞄を持ち歩いている噂を思い出した。実際に彩羅が見かけたことはないが、気になる。

『黒い鞄を持ち歩いているそうですね。中身は秘密だと聞きましたが、謎を教えてください』
 送ってから、ちょっと変だったかな、と思い直す。

『企業秘密なら教えなくてもいいですよ』
 これも送信してから、変だな、と思う。企業秘密って。
 取り消そうとしたが、もう既読がついてしまった。

『明日、店に行けたら教えるよ。君にだけ』
「え、ほんとに?」
 彩羅は驚いてスマホを見る。

 わーい、と猫が喜ぶスタンプを返して、ぎゅっとスマホを抱きしめる。
 自分にだけ、なんて言われると妙にどきどきしてしまい、落ち着かなかった。
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