こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
翌日、彩羅は平静を装って出勤した。
悲しみにくれてあの人たちを喜ばせる必要なんてない。どうせなら青空羊とのお出かけだけ考えて楽しく過ごそう。
どんな人かな。黒髪ロングヘアの背の高い美人かな。指が細くて長いから、きっとそうに違いない。動画で見かける手入れされた指先は毎回うっとりするほどだ。
総務課で席に着くと、一部の女性が集まって自分を見てひそひそし始める。
嫌だな、と思いながら始業を迎え、朝のミーティングを終えたとき。
「萌木さん、ちょっと来て」
課長に呼ばれて、一緒に会議室に入る。
席に着くなり課長は切り出した。
「萌木さん、西垣さんをいじめてるんだって?」
「え?」
彩羅は目を丸くした。
「昨日、西垣さんに泣きながら言われたよ。営業の岸山さんの証言もある」
「いじめてなんていません!」
「正社員登用をめぐって西垣さんを蹴落とそうとしてたんでしょ? 証拠のメールも提出してもらったよ」
タブレットで示されたのは、知らないメアドから出された月菜あてのもの。
『あんたなんかが正社員になれるわけないじゃん。早く出ていけ』
「こんなメール、知りません」
一緒に正社員になろうね、と頑張っていたのに。
「犯人はたいてい否定するよ」
課長がめんどくさそうに言い、彩羅は唖然とした。