こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「編み物ごときで、なんなの」
 あんなコスパもタイパも悪い趣味。意識の高い自分に酔ってるだけだろうし、下に見られてるみたいでそれもいらつく。

「なんで私じゃなくて彩羅なの」
 屈託なく笑う万葉が彩羅の前で屈託なく笑うから、余計に腹が立つ。

 前から万葉のことはチェックしていたが、会社ではそんな姿を見たことなんてない。むっつりと黙り込んですたすたと歩く様子をときおりロビーで見かけるくらいだ。

 拓斗は柔和だが、ああいう男は簡単そうに見えてまったく懐には入り込めない。万葉のほうが篭絡しやすいと思ったのに、心の扉は頑丈だった。
 最初に味方につけた勝江も、今では少し冷ややかだ。月菜はそれが自分の言動のせいだとは気が付かない。

「ぜんぶ彩羅のせい。許さない」
 憎しみの炎は以前にもまして強く燃え盛っていた。

***

 翌日からカフェはにぎわいを見せた。
 彼の編み物姿がネットで話題になってから手芸ショップの客が増え、ついでに休憩したり編み物をしたりする客が増えたからだ。

「あの動画の店、ここに似てるね」
「ねー」
 そんな会話があると、どきっとしてしまう。

 一方で、このにぎわいを逃さずにもっと盛り上げるには、と思案する。
「店長、提案があります。イベントとか割引とか、やってみませんか?」
 客の波が途切れたとき、彩羅は拓斗に声をかけた。
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