こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
土曜日、午後二時半。
ランチの客が引いたあと、彩羅は店の奥に「この先貸し切り」の札を出した。
編み物イベントのために、三時から四時までカフェコーナーの一部は貸し切りだ。
テーブルにあった紙ナフキンなどはすべて引き上げ、なにもない状態にする。
彩羅の提案通り、初心者向けにコースターを作ることになった。道具や材料を持っていない人には、こちらで用意してあるものを購入してもらう。
印刷してある編み図を配り、わからない人には個別に教えていく方式だ。
しばらくして講師の女性が来て、彩羅は一席に案内してコーヒーを出した。
どきどきして三時を待つが、五分前になっても予約の参加者が現れない。
不安になって拓斗を見るが、彼はいつも通りに笑みを浮かべている。
マリリンは用事があるとかで二時で帰ってしまったし、講師の前で不安を口にするのもはばかられる。
はらはらしていると、ガラス越しにギャルの集団が店に向かって歩いてくるのが見えた。
そのまま彼女らは手芸ショップの入り口をくぐる。
「ここじゃね?」
六人ほどのギャルが貸し切りの札を無視して入ってくる。
「すみません、今日は貸し切りで」
「イベントここって聞いたんすけどお」
彩羅はびっくりして彼女らを見た。
目の隅に動くものをとらえてそちらを見ると、マリリンが走って店に来るところだった。