【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
完全にバレていたことを知った理人は、口元に手を押さえながら唖然とした。
自分ではまったくそんなふうに行動していたつもりはなかったし、何より無意識に悠里のことを目で追っていたことを知って、恥ずかしさのあまり足元がフラついた。
そんな理人の様子を見て、総務部三人衆は「王子が狼狽えてる!」と言って笑った。
「す、すみません……。俺、そんなつもりは微塵もなかったんですけど」
「……でもね、王子。奥畑ちゃんを狙ってる人、王子だけじゃないからね〜?」
「──え?」
理人にそっと近づいて、声のトーンを一つ落としながらそう言った。
「……どういうことですか?」
「ほら、うちの会社にはもう一人エースって呼ばれてる子がいるじゃない?営業部の高元舜くん!確か王子と同期よね、彼?」
「えぇ。高元さんは同じ代で入社した同期です」
「さっきね?高元くんが奥畑ちゃんを連れて早々に帰って行っちゃったんだから!」
高元という名前が出た途端、理人の心臓がドクンと不穏な音を立てた。
悠里の嘘、そして高元という存在が最悪の形で結びついていく。
「あたしたちは奥畑ちゃんと王子推しだからさ?ちゃんと見張ってないと、奥畑ちゃん掻っ攫われちゃうわよ〜?」
「す、すみませんお先に失礼します……っ」
真紀子の話を聞いてすぐ、理人はその長い足を大きく開いて走っていく。
「(悠里ちゃん、なんで舜と一緒に……?)」
社内でこんなにも慌てた様子で走っていく王子は初めてだった。
すれ違いざまに話しかけられていることにさえ気づかないほど、理人は焦っていた。