【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
みんなから憧れられる理人じゃなくていい。
仕事ができて、気配りができて、なんでもスマートにこなせる理人よりも、こんなふうにただ悠里のことだけに必死になって膝をついてくれる彼に──……悠里は人生を共にしたいと心から思った。
「──はいっ。私も、理人くんと一緒にいたいですっ」
その言葉を聞いた瞬間、理人の中で大きく何かが動いた。
そしてこの世界で誰よりも幸せな涙が、ゆっくりと理人の頬を伝って落ちていく。
「よ、よかったぁ。嫌だって言われたら、どうしようかと……」
「言わないよ、嫌だなんて」
「でも俺、多分悠里ちゃんに嫌だって言われても諦めないと思うよ。君に振り向いてもらうまで、一生猛アタックし続けると思う」
「ふふっ、一生って」
「だって心の底から好きだって思える人に出会えたんだもん」
「……っ!」
「そんな人が俺の隣にいてくれるなんて、本当夢見たい。俺、今世界で一番幸せ者だね」
悠里からのイエスの返事を聞いて安心しきった様子の理人は、情けない声でふにゃりと笑った。
そしてそのまま悠里を引き寄せて、壊れ物を扱うように優しく、丁寧に抱きしめる。
「ずっと、本当にずっとこうしたかった……っ」
「ごめんね、理人くん。私、理人くん一人にこんな選択を迫るようなことして……っ。でもずっと不安だった。格好つけて自分の未来を考えて、なんて言ったけど、本当に理人くんが紗彩さんを選んじゃったらどうしようって……っ、怖くてたまらなかった」
「そんなふうに思っていてくれて、俺は嬉しいな」
「理人くんは裕一さんとは違う。絶対に出世なんかのために私を傷つけたりする人じゃないってわかってた。それでも、理人くんの隣にはもっと私以外にふさわしい人がいるんじゃないかとか、過去のせいで私が足枷になってるんじゃないかとか、どうしてもそんなふうに考えてしまう自分がいて……っ。どうしていいかわからなくなってた」
理人の腕に抱かれながら、悠里は自分の不甲斐なさやこれまでの不安を吐いていく。
一人でいることがすごく寂しかったこと。
理人が与えてくれていた優しさや温もりをずっと欲していたこと。
理人の広い背中に手を回して抱きしめ返しながら、 心の中にあったものをすべて理人にぶつけた。
悠里の思いを、理人は一言一句逃すことなくすべてしっかりと聞いていた。
「悠里ちゃんを不安にしないことが俺の一番の務めだけど、もしもまたそんなふうに思ったらこうして俺に言ってくれる?」
「……いいの?面倒くさくないの?」
「ううん、むしろ悠里ちゃんの気持ちは全部聞きたい。そのあと俺が何回だって言ってあげる。悠里ちゃんがどれだけすごい人で、俺に取ってどれだけ大事な人なのかってことを」
「……!」
「だから、これだけは約束してくれない?」
理人は抱きしめる力を一層強くして、悠里に懇願するように掠れた声で言った。
「──もう、俺から離れていかないで」