【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
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「──ほんっとうにごめん!何にも考えずに定時で仕事切り上げてすぐ、悠里ちゃん迎えに行かなきゃって総務に走ってた!」
「すごくビックリされたけど、同じ高校の同級生ですって説明しておいたから大丈夫だよ」
会社から少し離れた場所にある落ち着きのあるカフェの店内で、理人は両手を合わせて悠里に深く謝った。
理人が予約してくれていたのか、入店してすぐにお店の一番奥にある上質な席に案内された。
「考えてみれば、入社したての悠里ちゃんと五年目の俺が突然仲良くしてたら驚かれるよね……」
「うーん、驚かれた理由はそこじゃないかも」
「え?」
「理人くん知ってる?みんな理人くんのこと、王子様って呼んでるんだよ?」
「……王子、様」
そういうと、理人は再び顔をキューッと赤く染めて、それを隠すように両手で顔を覆った。
正直、見た目も喋り方も理人は信じられないほど変わっていた。
高校時代に二人が付き合っていたとき、理人はこんなふうに悠里と向かい合って座ることすらできずにいた。
一緒に帰ろうと悠里のほうから誘ってみても、『あ、えっと、今日はちょっと予定が……』とはぐらかされることが常だったし、恋人同士になったというのに手を握るというスキンシップすらまともにできなかったのが当時の理人だった。
そんな彼と十年ぶりに再会して、まさかここまで化けているとは想像すらしていなかった。
そして悠里は、〝冴えなかった元彼〟が〝王子様〟と呼ばれるまでに大変身した理人を見て、自分の落ちぶれ具合に密かに落胆していた。
「俺、王子なんかじゃないよ。……悠里ちゃんが一番よく知ってるでしょ?」