【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
悠里の心に染み渡るような穏やかな声。
いくら働けるようになったとはいえ、悠里が負った傷は未だ癒えてはいない。
気を抜けば涙がこぼれ落ちそうになってしまうのをグッと堪えながら、悠里は口角を上げて笑ってみせた。
「私ね、実は今年彼氏にこっぴどく振られちゃったんだよね!同じ会社の上司と付き合っていたものだから、居づらくなって辞めちゃって……!」
「え?」
「人生ボロボロっていうか、今どん底にいるなぁって感じで……!だから今年は勝手に厄年だって思ってる」
「……」
「でも、やっと転職先も決まって、こうやって理人くんにも会えたし!これから頑張るぞって気持ちが芽生えてきたから、多分もう……大丈夫」
どうか、笑い話にでもしてほしい。
高校生だったころとは大違いだねって、逆の意味で変わったねって。
変な気遣いも、同情も、悠里は求めていない。
ただ笑って話を聞き流してくれればそれでよかった。
「──よく、乗り越えたね」
「……っ!」
「悠里ちゃんは強い人なんだね」
その真っ直ぐな言葉に、悠里は思わず息を呑んだ。
「失恋したときの気持ちは……痛いほど知ってるから」
「理人、くん」
「でも悠里ちゃんはちゃんと自分の足で立ちあがろうとして、転職もして、えらいと思う」
「……」
「頑張ったんだね」