【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
理人が投げかける一つ一つの言葉が、悠里の心に染み渡っていく。
両親に裕一のことを伝えたとき、『もう忘れてしまいなさい』と言われて、次に自分がするべきことは彼のことを忘れることなのだと理解した。
結婚するかもしれないと伝えていた親友から『そんなクズよりもっと良い人捕まえて幸せになるしかないよ!』と言われて、悠里はこれから先もっと頑張らなければならないことが分かった。
けれど、理人は今の悠里を褒めてくれた。
「(あぁ、やばいな。なんか泣きそう……っ)」
これまで他人には頑なに見せてこなかった涙が込み上げてきて、悠里は慌ててそれを隠すように下を向いたそのとき。
「お待たせいたしました」という店員の声とともに、テーブルに料理が運ばれてくる。
「って、俺なんかが偉そうにごめん!」
「ううん、違うの」
「あ、ちょうど料理がきたよ!ここのパスタ、すごく美味しいから悠里ちゃん食べてみて!」
慌ててこの場の空気を変えようと明るく振る舞う理人に、これまでずっと張り詰めていたものが少しだけ溶けていくように感じた悠里は、目の前でばたついている彼に向き直って微笑んだ。
「……あ、そういえば私お昼もパスタ食べたんだ」
「え!?」
悠里のその一言に、ガシャンと大きな音を立ててフォークをテーブルに落とした理人。