【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「ご、ごめん……!そういえば悠里ちゃんがお昼何食べたのか聞いてなかったね。もし違うものが食べたかったらそれ二つとも俺が食べるよ!?だから悠里ちゃんは他のものを選んでも……」
「私パスタ大好きだから、むしろラッキーっていうか……!お昼は総務の先輩たちに鱈子パスタをご馳走になったんだけどね?そこもすごく美味しかったから、もし理人くんもパスタ好きなら今度一緒に行ってみない?」
「……っ」
「理人くん?」
フォークを落としたまま突然喋らなくなった理人の顔は真っ赤に染まっていて、そして悠里を見つめたまま固まっている。
「おーい、理人くん?」
「あ、えっと、ごめん」
「大丈夫?どうかした?」
理人は顔を赤くすると両手で覆ってしまう癖があるようで、悠里に赤面をバレないよう大きな手で自分の顔を隠した。
「悠里ちゃんとこんなふうに一緒に食事して、次の約束もできるなんて……なんだかもう夢みたいで、ちょっと怖い」
「そ、そんなことないよ!」
「これ夢だったらどうしよう。悲しくてしばらく立ち直れないかも……」
「アッハハ!大袈裟だよ理人くんってば!」
こんなふうに悠里がお腹の底から笑ったのはいつぶりだろう。
久しぶりに食べるあたたかくて美味しい料理と、他愛のない楽しい会話に、二人の時間はあっという間に過ぎていく。
食事も終えて店を出た二人は、少し肌寒くなった夜道を並んで歩きはじめた。
「すっかり遅くなっちゃったね。もしよかったら、家まで送るよ」
「あ、えっと……」