【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
悠里の手をギュッと握って、しっかりと彼女の目を見つめながら押し切るようにそう言った理人。その顔は真っ赤に染まっていた。
心なしか手も震えていて、理人の綺麗な瞳も動揺しているせいか揺らぎを隠せていない。
「(ずるい、そんな顔されたら断れない……)」
恥ずかしがり屋で照れ屋な理人が、どうしてここまで無理をして悠里のことを引き止めようとしているのか分からない。
けれど、どうしてだろう。
『嫌がることは何もしない』『身勝手な男の元に帰ってほしくない』という理人の言葉が、悠里には嘘に聞こえなかった。
それどころか、こんなにも自分のことを思って言ってくれているのだということが痛いほど伝わってくる。
「……本当に、いいの?」
「も、もちろんだよ!大歓迎!」
悠里のその問いかけに、理人の表情はパァッと明るくなっていく。
「迷惑じゃない?誰かと一緒に住むのって、思った以上に大変かもしれないよ?」
「ううん、俺にとってはむしろ……なんていうか、ご褒美っていうか……」
途端に恥ずかしくなったのか、だんだんと語尾を弱めながら真っ赤な顔を逸らしていく理人に、悠里はまた大きな笑い声をあげた。
本当に迷惑ではないのか、誰かに見られたりしないだろうか、元彼とはいえ今やただの他人だというのに一緒に暮らすだなんて普通のことではないのでないか。
悠里の頭の中にあったたくさんの考えごとは一旦捨て去って、今は理人の好意に素直に甘えさせてもらおうと決意した。
「じゃあ、家が見つかるまでの間だけ……お世話になってもいい?」
「……っ!うん!」
こうして、悠里と理人の期間限定の同居生活が幕を開けた。