【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。





 理人のそんな言葉に、悠里は目を丸くしてその場に立ち尽くした。

 「もっと寝てくる?」と声をかけてくれる彼の優しさに、泣きそうになるのをグッと堪えた。



 「……ううん。もうたくさん寝たから平気」

 「そっか。じゃあ身支度しておいでよ、その間に俺はこれ完成させとくね」



 ここまで一度も目を覚ますことなく熟睡できたのはいつぶりだろうか。


 以前の職場では裕一の出勤時間に合わせて同じ時間に起きて朝食の準備や裕一のスーツの用意を全て行っていた悠里は、とにかく毎日が多忙だった。

 土日の休みはあってないようなもので、裕一の仕事の資料作りを手伝ったり、家事や掃除に明け暮れ、何もしない日は一日もなかった。



 そんな生活から一転、理人の家に住むようになってから、悠里の中で流れる時間がとても穏やかでゆったりとしたものに変わっていた。



 洗面所で朝の身支度を整えてリビングへ戻ると、そこには理人手作りの朝食がテーブルに並べられていた。

 レタスときゅうりとトマトのサラダに、はちみつがかかったヨーグルトと、ふんわりと丸いオムレツ。それから昨日悠里が作っておいたシチューもあった。



 完璧な朝食に悠里は思わず感動した。

 けれど、理人の分のオムレツは失敗したのか、歪な形をしていて中の具材が飛び出してしまっている。




 「あ、私そっちもらうから理人くんこっち食べて?」

 「だ、大丈夫……!俺はこっちで!」

 「ダメだよ、そんなの」

 「ゆ、悠里ちゃんにはちゃんと完成したほうを食べてもらいたいから、ね?」







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