【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
我慢の限界がきたのか、理人はもう無理だと言うように両手で顔を覆ってしゃがみ込んだ。
会社ではキラキラな王子様と呼ばれる彼の、本当の素顔はこんなにも優しくて、不器用で、あたたかい人だった。
「ありがとう、理人くん。なんだか心が軽くなった」
「それなら……よかった。俺は悠里ちゃんの笑った顔が好きだから」
「え?」
「……って!えっと、違くて、そういう意味じゃなくてね!?ほら、悠里ちゃんの笑った顔を見ると元気が出るって言うか、俺まで明るくなれるっていうか」
「そんなことないってば。普通だよ」
「……ううん。高校生のときから、ずっと君のその笑顔が好きだった」
「……っ!」
「改めて、これからもよろしくね悠里ちゃん」
「う、うん。こちらこそ……」
今目の前にいる彼は、当時のさえなかった元彼と同一人物だろうか。
悠里の心の中はそんな疑問で埋め尽くされていた。
「……うん。このオムレツ、美味しいよ!」
「本当!?よかったぁ、大変だったけど、誰かのために作る料理って……なんかいいな」
けれど、今は理人の優しさを素直に受け取ろうと悠里は決めた。
そして、目の前で愛おしそうに微笑む王子様と一緒に遅めの朝食を食べるのだった。