【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
真紀子たちは悠里の迅速な対応に、各自で仕事を振り分けながらすぐにフロアを飛び出して準備に取り掛かる。
白神部長も悠里に『助かりました、ありがとう』とお礼を述べて自身の席へ戻っていく。
そこからの悠里の動きは、すさまじいものだった。
席に戻るとパソコンのキーボードを叩く音が響き渡る。
各部署から送られてきたバラバラの素材を一つにまとめ上げて、次々と見やすくデザイン性のいいスライドへと変貌させていく。
それと同時に『割烹・柊』の女将にも連絡を入れる。
「お世話になっております、奥畑と申します。……奥様でいらっしゃいますか?ご無沙汰しております。実は本日急なお願いがございましてお電話を差し上げました」
悠里がここまで熱を注ぐ理由は、この部署のみんなの力になりたいと思ったのと、あと一つ。
それはこの大型プロジェクトには理人も加わっているからだ。
理人は今回の件の中心人物として、毎日遅くまで残業したり休みを献上したりしてまで頑張っている姿を近くで見ていた悠里は、どうしても見過ごせなかった。
入社してわずか数週間の悠里が出しゃばることで、生意気だと言われないだろうか。
美桜の手柄を取ったと思われないだろうか。
悠里の心の中にはそんな葛藤があった。
それでも立ち上がって美桜に声をかけたのは、理人のためだった。