【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「桜庭さん、一通りできたと思うので最終確認をしていただいてもいいですか?私はこれからプロジェクターの投影テストをしてきますね」
「うぅっ、本当の本当にありがとうございます奥畑さん!私、奥畑さんがいなかったクビになってたかもです……っ」
会議が始まるまで、あと三十分を切っていた。
ふぅっと一息ついて辺りを見渡すと、総務部のフロアには今回のプロジェクトに関わる他部署の人たちがたくさん出入りしている。
どうやら今回の騒動を聞きつけて状況を把握しに来ているのだろう。今まで見たことがないほど総務部は慌ただしくなっていた。
悠里は休むことなくプロジェクターのテストをしに会議室へ行こうと再び席を立ったとき。
「──わぉ、すげぇじゃん!総務部、完全に終わったと思ってたのに完璧にリカバーしてね?」
悠里の耳元に、軽薄な明るい声が飛んできた。
その声の持ち主は、営業部のエースと名高い男、高元瞬だった。
明るめの茶髪に、スーツをゆるく着こなす彼は、突然ここへやって来て拍手をしながらそう言った。
会議まで残りわずかな時間となって焦っている悠里は、軽く会釈だけしてフロアを出て行こうとすると、高元はヒョイと手を伸ばしてそれを阻止する。
「え?」
「営業部の高元って言います、どーも」
「は、初めまして……。総務部の奥畑と申します。あの、大変申し訳ございませんが今急いでおりまして……」
「まぁまぁ、もうそんなに急がなくても大丈夫っしょ!それよりうちの部署が人数変更とかちゃんと伝えれてなかったみたいでマジでごめんね!」