【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「……!」
肩にグッと腕をかけて絡む高元に、悠里は思わず両肩をビクつかせる。
こういうときこそ冷静にならなくては、と自分に言い聞かせる。
悠里が裕一の秘書をしていたとき、接待で酒に酔ったクライアントに絡まれることは何度もあった。
強引に肩を組まれたり、腕を引っ張られて抱き寄せられたりすることも一度や二度ではない。
それでも裕一は悠里を助けたことはなかった。少しずつ経験を重ねながら、悠里は相手の気分を害さないように己を守る方法を身につけていくしかなかったのだった。
「あの、高元さ……」
「──その手、離してください」
そのとき、聞き馴染みのある声が頭上から降ってきた。
そしてそれと同時に力強く高元の腕を引き離したのは、理人だった。
「うわ、王子じゃん」
「高元さん、セクハラで訴えますよ?」
「ぶっ!なんでお前が訴えるんだよ、丹波!」
社内の王子様の登場に、この場は一気に騒がしさを増していく。
黄色い声が飛び交う中、高元だけはゲーッとあからさまに嫌な顔を浮かべた。
そんな高元にはお構いなく、理人は悠里をフロアの外に出して小声で話しかける。