【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。




 「ごめんね悠里ちゃん。大丈夫?あの人に何もされてない?」

 「う、うん大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」

 「ううん。それよりうちのプロジェクトのミスを助けてくれたって聞いたよ。本当にありがとう」

 「そんな、みんな大袈裟に言ってるだけだよ。私、前職では秘書やってたからこういう土壇場のミスには強いってだけなの」

 「それって悠里ちゃんが今まで頑張ってきたからできたことだよね。やっぱり悠里ちゃんはすごいや、俺も見習わないと……」




 理人のその言葉に、悠里はトクンと心臓を跳ね上がらせた。

 「(どうして理人くんはいつも『私』を褒めてくれるんだろう)」


 桜庭も真紀子も、みんな悠里が前職の経験のことを話すと「だからか!元秘書、頼れるわぁ!」と言って褒めてくれた。

 もちろん悠里にとってその褒め言葉も十分に嬉しいものだった。


 けれど、理人だけはいつだって悠里本人を褒めてくれる。

 それは今に始まったことじゃない。裕一との別れを話したときも『頑張ったんだね』『えらいね』と言って悠里の努力や頑張りを認めて、褒めてくれた。


 そんな理人の何気ない優しさや好意に、悠里はまるで照れたときの理人と同じように顔を赤くさせた。



 「あのね、悠里ちゃん。もしよかったら今日一緒にご飯でも……」

 「──丹波さん!会議始まっちゃいますよ!」



 さらに声を小さくして悠里の耳元でささやいた理人の声に被せるように強く名前を呼んだのは、理人の秘書である恩田沙耶だった。

 彼女は理人の腕を引いて総務部のフロアから退散するよう急かす。



 「……ごめん悠里ちゃん、またあとでね。あ、メッセージ送るね!」

 「うん、またあとで」



 シュンと寂しそうな顔を隠せていない理人に、悠里は柔らかい笑顔を浮かべた。

 そして悠里も今度こそ会議室へ向かおうとしたとき、フロアの外から思いきりこちらを睨んでいたのは恩田だった。





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