【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
定時を過ぎて少しずつ人が減っていくオフィスに、コツコツと高いヒールの音が鳴り響いた。
「お邪魔しまぁす。……あ、奥畑さんちょっといいですか?」
「……恩田さん。お疲れ様です」
堂々と総務部の扉を開け放ってやってきた恩田は、手に持っていた大量のファイルをドサリと遠慮なく悠里のデスクに投げ置いた。
バランスを崩したファイルたちは雪崩のように悠里の足元へバサバサと落ちていく。
「……」
あのときの会議のから、悠里は恩田にあからさまな敵意を向けられている。
会議を終えてプロジェクトが本格的に動き出したその日から、恩田から直接仕事を振られるようになった。
「恩田さん、こちらは?」
悠里は足元に落ちたファイルたちを拾いながらそう問いかけると、恩田はふっと笑って小馬鹿にしたように口を開いた。
「このファイルの中から、過去五年分の冷凍食品の売り上げの推移と主にどんな食品が売れているのかをまとめてもらっていいですか?明後日くらいまでに」
「……」
誰が聞いてもわかるほどの無茶振りだった。
恩田から今日届いた仕事の依頼でさえまだ終わってないというのに、さらに追加で重たいデータ集めの仕事を悠里に振るのはわざとだ。