【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「あの、恩田さん。すみませんが……」
「できない、なんて言わないですよね?昨日も言いましたけど、あなたがた総務部の事前確認が甘かったせいで、経営企画部の作業に遅れが出てしまっているんです」
「……っ」
「会議が無事済んだから終わりなわけないじゃないですか?会社舐めすぎじゃないです?」
「でもっ」
「ごちゃごちゃ言ってないで、早く手を動かしてくださいよ。あなた優秀なんでしょ?」
「……」
「元秘書だったかなんだか知らないけど、今のあなたはただの総務部で、一番社歴のない使えない社員なんだから、言われたことをやってください」
恩田の敵意むき出しの言葉が、悠里の心を突き刺していく。
あのとき理人と話していたのが気に入らなかったのだろうか。それとも高元さんと会話していたせい?
どうしてここまで目の敵にされているのか、悠里には原因がわからなかった。
「あぁ、でもどうしてもできないって言うなら声かけてください。そのときは丹波さんにちゃんと伝えておくので。『奥畑さんは仕事を放棄しました』って」
「そんなっ」
「じゃ、よろしくお願いしまぁす」
勝ち誇ったように笑いながら、恩田は誰もいなくなっていた総務部のフロアを出て行った。
こんな大掛かりな作業は本来、部長の許可を取ってから正式に仕事として降りてくるものだということは悠里もわかっていた。きちんと断らなければ通常作業にも影響が出てくるということも承知だった。