【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。





 最近、悠里が残業続きで忙しくしていることを理人は知っていた。

 夕飯を食べる間も惜しんで自室にこもってはひたすらパソコンのキーボードを叩いていることもわかっている。



 「……っ」

 そんな理人の優しさに、悠里は思わず涙をこぼしてしまった。



 「ゆ、悠里ちゃん!?」

 「あ、いや、ごめん!やだな、最近ちょっと疲れてるのかも」



 無意識だった。

 目を開いたまま勝手に意図せず流れ落ちてくるそれを、悠里は雑に拭いとる。



 「うん!私もお腹すいたし、理人くんのうどんもらっちゃおうかな!」

 「悠里ちゃん」

 「きゃっ!」



 どんなカラ元気も、理人には通用しない。

 ゴシゴシと目元を擦る悠里の腕を優しく引いて、理人はそっと抱き寄せた。

 その抱きしめ方は、悠里の存在を慈しむような、優しさにあふれたものだった。





 「……仕事、大変?」

 「あの、今だけっていうか、その」

 「何か手伝えることはある?こう見えても俺、仕事だけはちゃんとしてきたつもりだからできることがあるかも」


 理人の優しい声色に、すべて打ち明けてしまいたかった。

 恩田に目をつけられてしまっていること、業務外の仕事を個人的に押し付けられていること。



 全部、全部言ってしまいたかった。

 言えば理人ならきっと何か手を打ってくれるだろう。そうすれば今抱えている大量の仕事から解放されるだろう。







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