【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。






 「大丈夫!忙しいのが終わったら、今度は私がうどん作ってあげるね!」

 「……っ!」

 「り、理人くん?」


 悠里がそう言うと、理人はまた耳まで赤くしながら両手で顔を隠した。



 「……その笑顔は反則だよ、悠里ちゃん。胸が苦しいよ」

 「え、えぇ!?」

 「ご、ごめん俺寝るね。おやすみ、また明日ね」


 まるで逃げるように自分の部屋へ戻っていく理人を見て、悠里は思わず本当の笑みがこぼれた。

 会社ではあれだけ格好よくて、みんなから王子様と呼ばれているような彼が、悠里の前だけで見せるあの真っ赤になって焦る姿に特別感を抱いた。


 そして悠里は再び会社のパソコンを開いた。

 あと少しだけ終わらせて、続きはまた明日やろう。



 最後の力を振り絞るように仕事をしていると、デスクに置いてあったスマホがブーブーと震えた。

 こんな時間に誰だろうと画面を確認した瞬間、悠里は息を呑んだ。




 【裕一:家は借りられたの?】

 【裕一:まさか誰かの家に居候なんて恥ずかしいことはしていないよね?】

 【裕一:そういえば転職したと聞いたけど、そっちではちゃんとやれているの?小さなミスには気をつけるんだよ】

 【裕一:まだ僕のことが許せない?もう一度ちゃんと話したいんだけど、今週の日曜日はどう?】







 「なんで……っ」

 身勝手すぎる裕一言葉の羅列に、吐き気が込み上げる。



 「居候が恥ずかしいことだなんて……そんなのわかってるよ」


 何回も不動産屋に足を運んで、その度に審査に落ち続け、同じ部屋の希望者たちに負け続ける。

 それでもどうにか諦めないで頑張ろうとしているのに、恩田から振られてくる理不尽な仕事のせいで家探しの時間さえ取れない状況に、悠里はどこにも吐き出せない苛立ちを募らせていく。





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