【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。






 理人と再会してからというもの、彼のあたたかくて優しい言葉たちに触れてきた悠里にとって、裕一からの皮肉めいたメッセージがいかに酷いものなのかようやく理解した。


 過去のトラウマと今のしかかってきている重圧に、悠里の心は容赦なく削られていく。



 「(私はもう裕一さんがいなくても一人でもちゃんとやれるって証明しなきゃ)」



 震える手でスマホを裏返して、再びパソコンの画面と向かい合った。

 「……負けない。こんなことで、絶対に負けないから」




 けれど、無理を重ねた悠里の身体はすでに限界を超えていた。

 今日もいつもどおりの仕事を終えて、定時のチャイムが鳴ってもなお悠里は恩田の仕事を終わらせるべくパソコンに齧り付いていた。

 そして立ち上がって資料を取ろうとしたそのとき、悠里の視界が大きく揺れて、身体はまるで糸が切れたかのように傾いていく。




 「(あ、やばいかも)」

 「奥畑ちゃん!?」



 ちょうど帰ろうとしていた真紀子たちの驚いたような声が聞こえる。


 「(これ、今倒れちゃったら労災になるのかな……。仁科さんたちには迷惑かけたくなかったのに)」

 倒れようとしている瞬間でさえ、そんなことを考えてしまう時点で悠里は少しおかしくなっていた。




 「──悠里ちゃん!!」


 床に体を打ちつけてしまう前に力もうとしても、うまく力が入らない。

 せめてもとキュッと目を瞑ったそのとき、悲痛な叫び声と共に、力強い腕が悠里の体を抱き止めた。

 何度も嗅いだことのあるふわりと香る落ち着く匂い。もう顔を見なくてもそれが誰なのか悠里はすぐにわかった。






 「理人、くん……?」

 「悠里ちゃん、大丈夫!?どうしたの!?なんでこんなに……っ」





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