【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
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「──恩田さん、話があるので今少しいいですか?」
「あ、丹波さん!おはようございます!すぐ行きますね!」
経営企画部のフロアは異様な緊張感に包まれていた。
いつもは爽やかな笑みを絶やさない人当たりのいい理人が、今日はまるで別人のように顔を曇らせながら会議室へと向かって行ったからだ。
「失礼しまぁす!」と軽い口調で入ってきた恩田を見た途端、理人は手に持っていた分厚いファイルをテーブルに放り投げた。
バサリ、と鈍い音が響く。
いつもとどこか違う雰囲気を察した恩田は、その音にビクッと肩を跳ね上げた。
「いつ、僕がこの資料の集計や分析を総務部の奥畑さんにお願いするよう伝えましたか?」
「あ、いや、それは……っ」
恩田は理人の秘書として二年間一緒に働いてきた。
けれど、理人のこんなにも冷たい言葉は初めて耳にした。
「今回のプロジェクトにかかる費用の概算を同じくまったく無関係の奥畑さんに依頼したのはなぜですか?」
「えっと、その、ちょっと手伝ってもらっていただけで……」
「彼女に送ったメールには手伝ってほしいなどという単語は一言も出ていませんでしたが」
「……っ」
地を這うような低い声で淡々と事実だけを確認してこようとする理人に、恩田は恐怖を覚えた。
そして悠里にやってきたことがいかに大きな罪だったのかということを、理人の態度を見てすぐに理解した。理解したときにはもう、手遅れだった。