【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「僕の個人的な思いはさておき、社内でそんなことをするような秘書は僕には必要ありません」
「す、すみませんでした……っ!もう二度としません!奥畑さんにもきちんと謝罪します!だから……っ」
「この件は秘書課と人事部には報告しておくので、あとはそちらと話をつけてください。僕からは以上です」
「あの、やだっ、本当にごめんなさい……!丹波さん、ごめんなさい!」
泣いて縋りつこうとする恩田の手をゆっくりと引き離して、理人は無言で会議室をあとにした。
会議室を出た理人は、こんなにも他人に冷たく接することができてしまった自分に驚きを隠せずにいた。
本来、理人はそんな性格ではなかった。
けれど、昨日悠里が自分のそばで力なく目を瞑ったあの瞬間を見て、トラウマにも近しい恐怖に囚われた。
「(せっかく奇跡みたいにまた再会できたんだ……っ。もう二度と、悠里ちゃんを失いたくない)」
理人は覚悟を決めたようにギュッと自分の手を握りしめながら、自分の部署へと戻って行った。