【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
理人と再会してからというもの、彼の優しさあふれる言葉に何度も救われてきた悠里にとって、久々に感じるこの悪意に満ちた裕一のそれらに、眩暈がした。
「ほら、こんな会社辞めてしまいなよ」
「……」
「今、総務部で働いているんだって?大したポストでもないし、うちに戻っておいでよ。また雇ってもらえるよう計らってあげるから」
言葉の節々から伝わってくる悠里を見下した発言に、悔しさと、惨めさと、怒りでどうしようもなくなる。
無意識に握りしめていた手は爪が食い込むほど力強く震えていた。
「(絶対に、泣くもんか……っ)」
こんな人に涙なんか見せたくない。
悠里は顔を上げて真っ直ぐに裕一を睨みつけた。
今までの悠里ならここで心を折られていた。
自己嫌悪に陥り、裕一の言葉に心を抉られて泣いていたに違いない。
けれど、ここまで彼女を強くしたのは理人のおかげだった。
〝悠里ちゃんはちゃんと自分の足で立ちあがろうとして、転職もして、えらいと思う〟
〝よく乗り越えたね。悠里ちゃんは強い人なんだね〟
どんな時も悠里自身を褒めて、認めてくれる。
自分はこんなふうに踏み躙られていい存在ではないのだと、理人の数々の言葉や思いや、行為が悠里を強くした。
「触らないで」
握られていた腕を思いきり跳ねのけた。