【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「だ、だだ、大丈夫だった悠里ちゃん!?」
「……ごめんね、理人くん。また迷惑かけちゃって」
会社の一階に設置されているカフェテリアに入った途端、理人は心臓をバクバクさせながら悠里と向かい合った。
少し前までの裕一と対峙していた一切隙のない冷え切った態度とは正反対に、手をバタつかせながら悠里の泣いている姿に狼狽えている理人を見て、悠里は小さく笑った。
「急に間に割って入っちゃってごめんね!俺、訳もわからずあんなことして……っ!でも悠里ちゃんが泣いてる姿を見て、もう無意識に声かけてて……」
「ううん、理人くんが来てくれてよかった。まさか私の職場まで来るとは思ってなかったから、また助けられちゃった」
「さっきの人が、悠里ちゃんが言ってた元彼……だよね?」
「うん」
「……そっか」
理人は少し俯きながら、ギュッと唇を噛み締めた。
悠里はいつもあんなふうに威圧的な態度を取られて、それを一人で耐えていたのだろうか。
有無を言わせないように腕をきつく掴まれているあの光景が理人の頭から離れない。
高校時代、あれだけ笑顔が眩しくて明るい人だった彼女が、涙を浮かべるほど怯えていたあの表情を思い返しては居た堪れなくなる。
そんな苦い表情を浮かべている理人を見て、悠里もまた心を痛めた。
「あ、理人くんこれからきっと外の仕事だよね?今すごく忙しい時期なのに、こんなことで引き留めちゃってごめんね。私はもう大丈夫だから、行って?」
鼻を啜りながら笑う悠里を見て、理人はもっとそばにいたい気持ちと、それでも次の仕事へ行かなければならいという葛藤に苛まれた。
「ねぇ悠里ちゃん。今日、一緒に帰らない?……できれば、当分の間一緒に帰りたいかも」
「でも理人くん、仕事がある……よね?」
「それは全然大丈夫!パソコンさえあればどこでもできるものだし!それにね?最近残業続きで部長に怒られたばっかりだからちょうどよくて!」
そう言って冗談ぽく笑う理人は、あきらかに悠里を安心させるために気を遣ってくれている。
その優しさが、悠里には申し訳なくてたまらなかった。