【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
経営企画部に所属する社員たちはみんな、いわゆるエリートと呼ばれる類の人間たちの集まりだ。
有名な大学を出て、さらに院に進んで学びを深めた者や海外留学を経てからやって来た強者だらけの中に、理人は五年間身を置き続けている。
出世を目論む同僚たちの中で、理人は唯一ただ純粋に仕事を楽しんでいた。
自分の頭の中で生まれるアイデアを形にして、それらをいろんな人たちと連携しながら進めていく。忙しいし大変だと思うことは多々あっても、これまでそれが嫌いになることはなかった。
今もそうだ。
今回、理人が新たに立案した『忙しい女性のための冷凍弁当』という大型プロジェクトの実行責任者として、日々あちこち駆け回りながら着実に進めてきていた。
ただ、今回のプレゼンだけは純粋に楽しい、以外の思いが含まれている。
「よし、それじゃあ行こうか丹波君」
「はい、部長。参りましょう」
広々とした会議室では、プロジェクターの作動音が静かに響いていた。
経営企画部以外にも、営業部や生産管理部の幹部たちがずらりと席を埋める中、理人は上座の中央に腰を下ろす。
「それではみなさん、始めさせていただきますね──」
理人の表情から、少し前までの穏やかで人当たりのいい雰囲気が消え去った。
そこからは怒涛の勢いでさまざまな会社のプレゼンが行われ始めた。
この一室にはペラペラと資料をめくる音やいくつもの質問が絶え間なく投げ交わされていく。
そして、本日最後の一社として大トリで登壇したのは──……裕一が率いる東洋テクノフードだった。
プレゼンの進行は部下に任せ、裕一本人はそれを見守るような形で始まっていく。