【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
それでも、こんな情けない男に悠里の心が一時でも向いていたのかと思うと、どうしても醜くどす黒い感情が沸き起こってしまう。
それでも理人は必死にその気持ちを押し殺していた。手に持っていた資料をクシャリと握りつぶして。
「あぁ、それとね?今日、君が私情を挟んで僕らに不当な扱いをしたことは後で正式に会社として抗議する予定だからね。覚悟しておくことだね」
「無駄足になるだけだと思いますよ?」
呆れたようにため息を落としながら、理人は手元のタブレットを手に取ると、画面をタップして玉木の目の前へと滑らせた。
「なっ!これは……っ」
「あの日、あなたがロータリーで悠里ちゃんに行った暴力行為は、今日ここに座っていたうちの社員全員が共有していましたので」
タブレットの画面に再生されているのは、裕一が悠里の腕を力任せに掴み、無理やり自分の車へ連れ去ろうとしている防犯カメラの録画映像だった。
これを見た裕一の顔から、サッと血の気が引いていく。
「うちの大切な社員にこんなことをするような人と、一緒に仕事ができるわけがないでしょう。こちらも今、東洋テクノさんに『コンプライアンス違反』として正式に抗議文を出す準備をしております。また近いうちにお会いすることになるかもしれませんね?」
完全なる社会的なトドメだった。
「これは悪意のある切り取りだ」「誰も信じるわけがない」などと言って騒ぎ立てている裕一の横で、会議室の片付けを再開する理人。
そのとき、会議室の扉がノックされた。
「失礼致します。そろそろこちらを締めるお時間となりましたので──……って、え?」
その声と同時に扉が開かれると、そこにはバインダーを抱えた悠里が立っていた。
「ゆ、悠里ちゃん!?」
「理人くんに、裕一……さん?」