【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「クソッ!どいつもこいつも僕を馬鹿にしやがって……っ」
「お帰りください、玉木部長」
「お前まで僕にそんな口を利くな!僕がいないと何もできない女のくせに!」
──大丈夫、もう何も怖くない。
──ちゃんと自分の口から、言えたんだから。
「お前がこの職場に転職できたのだって、僕が今まで手取り足取り社会のことを一から教えてやったおかげだろう!」
──だってここには今、いつだって自分の味方になってくれる理人がいるから。
「ねぇ、悠里?丹波君が隣にいてくれるからって随分と偉そうになったようだけどね?」
「……っ」
「その男がいつまで悠里のそばにいてくれると思うの?」
「……!」
裕一はこうして悠里の心の抉り方を熟知している。
孤独にさせ、自分を卑下させ、そして悠里の味方は自分しかいないのだと思わせる。
「いずれ、彼も僕と同じ選択をすると思うよ?」
「そんなこと……!」
どれだけ悠里が彼の言葉を心の中に入れさせないよう努力しても、じわじわと侵食してしまう。
「今のご時世、がむしゃらに頑張れば上に登れるわけじゃないんだ。彼だって、いつ出世の欲に駆られてしまうかわからないだろ?」
まるで呪いのような台詞の数々。
悠里は心の中で何度も『理人くんはそんな人じゃない』と言い続けた。
「一人ぼっちになってしまったときでも、悠里は今と同じように僕には歯向かうことができるのかな?」
これ以上、裕一の悪意に染まりたくない。
けれど、こんなふうに他人を陥れるような人から逃げて負けたくない。
ただひたすらに裕一の言葉に耐え続けていた、そのとき。