【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。





 悠里の肩からゆっくりと離れて、理人はしっかりと悠里と再び向かい合う。

 自分だけが過去のトラウマに囚われているのだと思っていた。けれど、目の前でこちらの反応を伺うように見つめる理人もまた、十年前のあの日の後悔から動けずにいたのだと、悠里はようやく気がついた。





 「いつか、もう一度悠里ちゃんの隣に立つことができたなら、今度こそ相応しい男になりたくて今まで必死に努力してきた。もしも悠里ちゃんにもう一度会えたなら、もしいつか出会えるチャンスがあったら……そんなことばかり思いながら生きてきた」



 ゆっくりと顔を上げた理人の瞳は、泣き出しそうなほど切実な熱を帯びていて、ただひたすらに悠里を真っ直ぐに射抜いていた。





 「だからね、悠里ちゃん。俺が出世の欲に駆られて君を捨てるなんてあり得ないことなんだよ?」

 「……うぅっ」



 『いつか出世のために君を捨てる』という裕一が残した呪いを、理人の言葉が崩していく。

 悠里の目にはさまざまな思いが混ざった涙が浮かび上がっていた。





 「一人で生きていく準備なんてしないでほしい。もう二度と、君を一人にしない。絶対に手放さない、だから──」

 「……っ」

 「もう一度、悠里ちゃんの隣に……いさせてくれない?」



 そう言った理人の瞳から、ツーッと一筋の涙がこぼれ落ちた。

 「あ、やば……っ。絶対泣かないって、決めてた、のになぁ」




 ゴシゴシと不恰好に涙を拭う理人。

 王子様の仮面を脱ぎ捨てた彼のその涙を見た瞬間、悠里の胸の奥底で必死に押さえ込んでいた感情が溢れ出てくる。

 そしてとうとう悠里も堪えきれずに大粒の涙をこぼしていく。




 「あ、え、悠里ちゃん!?」

 「私、理人くんがに出会うまで、もう一生一人で生きていくつもりでいたのっ。誰かに期待したり、愛情を求めたりするから、裏切られた時に自分が傷ついてしまうんだって、そう思ってたから」




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